[イラスト解説]ティール組織
新しい働き方のスタイル
新しい働き方のスタイル
書籍「ティール組織」から分かるポイントをまとめます。
ティール組織―新しい働き方のスタイル
ティール組織を実践しているという日本企業も増えてきましたが、どこまで実践されているかとか、従業員の満足度はどの程度かと十分に図られたものではありません。
しかしながら従来の組織に違和感や限界を感じ、変革が必要だと考える人も多くいます。
本当によい組織を求めているからこそ日本でも話題になっているのがこの「ティール組織」だといえます。
本書はイラスト解説の多い本で、少しくだけた具体的なストーリーが織り交ぜられ、とても読みやすい本です。
そんな新しい働き方のスタイルと言われる「ティール組織」について本書から分かる重要な部分について要約します。
こんな方におすすめです。
- ソフトウェア開発においてアジャイル開発を採用している or しようとしているリーダー
- 働き方改革における責任者 or 興味関心のあるビジネスパーソン
- 今の組織に不満や限界を感じているCEO、役員、管理者など
ポイント
ティール組織とは
以下3つの特徴を持ち、トップダウンではなく、目的に向かって自走できる組織をいいます。
- セルフマネジメント(自己管理)
- ホールネス(全体性)
- エボリューショナリーパーパス(常に進化する目的)
上司に指示命令され、機械的に働くのではなく、個々が自分らしさを最大限に発揮しながら、自ら意思決定をしていきます。そして、上下関係や、管理が少ない環境で、チームワークが発揮され、組織の存在目的を追求していく生命体のような有機的な進化型組織構造です。
理想的とも思えますが、では現代の組織ではどんな問題があるのでしょう。
今の組織の問題点
組織はどこか壊れている
2013年の世論調査(ギャラップ世論調査)で、世界中の社員のわずか13%の人しか職場に満足していないことがわかりました。63%は不満であり、24%はまったく合っていないと感じているということです。
うまく回っているように見える組織でも、腹を割ってみると、競争やプレッシャーに疲れ、労働に消耗しきっています。
また会社だけにとどまらず、関わる顧客や組織として機能するところ、学校や病院、工場や団体、政府、地球まですべて本来求めている最適なものにはなっていないといえます。
突然の飛躍で人類は進化する
人類は歴史的にみて、部族の時代、農業の時代、科学/産業革命の時代と突然の飛躍で進化を遂げています。
人間の意識を研究している思想家「ケン・ウィルバー」は色を使ってこれらの段階を表現しました。
それぞれ以下のとおりです。
- Red(赤):衝動型組織のパラダイム
- Amber(琥珀):順応型組織のパラダイム
- Orange(オレンジ):達成型組織のパラダイム
- Green(緑):多元型組織のパラダイム
- Teal(青緑):進化型組織のパラダイム
狼の群れのような動物型組織ともいえます。力ですべてを支配する組織であり、強い者が偉いという世界観です。目線が短期的で、生存することに焦点をおきます。仕事の分業とトップダウンの権力構造をもたらしました。
ピラミッド化された軍隊型組織ともいえます。力をもったリーダーがルールをつくり、上司の指揮命令が絶対であるという世界観です。Redよりも長期的な目線へ変化しました。再現可能なプロセスと安定した組織図をもたらしました。
科学と産業革命がもたらした世界観で、機能型組織ともいえます。Amberで対応できなかった環境の変化に適応します。より合理性を持ち、階層構造によるヒエラルキーがありながらも、成果を出せば上に上がれるスタイルです。
ほとんどのMBAプログラムはこのオレンジ組織を基本とし、一般的な企業のマネジメントもここに集約されています。
イノベーション(革新主義)とアカウンタビリティ(説明責任)とメリトクラシー(実力主義)をもたらしました。具体的にはイノベーションではR&Dやマーケティング部門の創設、アカウンタビリティでは目標管理や会社方針、メリトクラシーでは人材管理、リーダーシップ・トレーニングなどが挙げられます。
機械ではなく本来の個を大切にする家族型組織ともいえます。個人の多様性が尊重されやすく、主体性を発揮しやすい組織です。権限の委譲と価値駆動の文化とステークホルダーの価値観を活かすことをもたらしました。
それにより、逆ピラミッド型の考えや、社内規定や就業規則を必要としない価値重視の文化、それにより、株式第一主義ではなく関わるすべての人、環境への責任意識が出てきます。
心理的安全性が担保されやすく、Orangeよりも格段に雰囲気はよくなりますが、一方で注意点もあります。
組織としてのヒエラルキーは残り、決定権限はマネジメント側が持ち、ピラミッド型を保全してしまう矛盾があります。意思決定をどこでするかわからず混乱を招き、中途半端な状態に陥りかねません。
対策としては、傾聴や動機づけを育てるサーヴァントリーダーの設置が効果的でしょう。
そして今まさに人類は、次の新しい飛躍をする時期にきていると著者はいいます。
その進化系はどのような組織なのでしょう。
ティール型組織のパラダイム
Greenの家族型組織が進化した次世代型組織です。組織をひとつの生命体と捉える世界観です。
こうあるべきという固定観念から本来の自分自身と、自分の持つ才能を解放します。そしてエゴを抑制することで、恐れや野心、欲望が人生を操っていたことに気付きます。
ティール組織は、冒頭でも述べたとおり、以下の3つをもたらします。
ティール型組織がもたらすもの
- セルフマネジメント(自己管理)
- ホールネス(全体性)
- エボリューショナリーパーパス(常に進化する目的)
ティール組織で最も注目すべき特徴です。指示系統のない組織であるためにはメンバー全員が自己管理し、自ら目的を実現できるように行動できる必要があります。
従来のヒエラルキー構造では、トップの人がすべてを把握することには限界があり、複雑系に対処できません。集中化した意思決定方式では、鳥が群れで飛んでいるときに互いにぶつからないようにすることはできません。
鳥は分離・整列・結合のたった3つの方式に従っているだけです。
- 分離:混雑した中で隣からの逃避
- 整列:近隣仲間との平均的方向をそろえる
- 結合:近隣仲間との平均的距離を保つ
組織構造はフラットで、クライアントや競合相手とはメンバーが直に向き合います。
問題解決に目標やボスは不要で、メンバーで相談し良い方法を探りながら選択します。
そしていかに良質な仕事ができるか、賢明な意思決定ができるかの重要性を理解します。
意思決定は、従来のトップダウン型でも投票(多数決)型でもありません。既に決まっているものに合意するだけのものでもありません。助言プロセスにより、多くの助言を受け、洞察に満ちた助言により、決定内容も上質になります。
報酬とインセンティブは、複雑に考える必要がないといいます。ティール組織のメンバーは既にインセンティブの必要性を感じません。ボーナスのようなやる気を出させる仕掛け自体が侮辱的と考えるからです。利益は多く上がった時に皆に分配する方法を選びます。
また昇給は自分たちで決定します。毎年報酬引き上げ請求レターを書く権利が与えられ、毎年変わる報酬委員会(ボランティア)で対話することで決めていきます。
パフォーマンス管理は、組織が自然と上げてくれます。上司の圧力でサボりを抑制したくなりそうですが、ティール組織では反対の現象になるといいます。
自分のエネルギーやアイデアが発揮でき、クライアントから直に感じられるマーケット需要によりモチベーションは維持されます。またチーム同士の相互振り返りにより、発起効果もあります。
あくまで全員平等でもなければ、才能やパワーを排除するわけでもありません。
それぞれが目的に向かい、自分の領域の中で最も力を発揮することに集中することが大切です。
何らかの理由から組織には、仮面をかぶるよう表現しがたい圧力を感じることがあります。それでは個人も組織も生き生きと力を発揮することができません。
ありのままの自分を職場にさらけ出すことで、潜在的な能力を解放させ、パワーを引き出すことを可能にします。
そのためにはメンバーの多様性を尊重することが必要です。
メンバーが不安を感じないように心理的安全性を担保することが大切です。
個人を会社に安心して持っていくことができるように、ありのままの自分を見せても、傷つかず受け止められるような環境づくりをします。
そのためには、メンバーそれぞれの背景や興味関心、好きなことなどプライベートを共有し合い、相互理解を深めることです。全員が集まりマインドフルネスとして瞑想をしたり、振り返りの集会をおこなうことも有効です。集会は75分間で、6〜10人のグループを作り、グループ内で失敗に対する対処などを発表・共有する例が本書で示されています。これにより、共通経験が得られ、コミュニティが強化され、共通の言葉を持つことができます。
また、ストーリーテリングという夢や感謝を物語のように語る会議も有効な方法として紹介されています。
常に進化する目的とは、組織がその目的に耳を傾けて、一緒に踊ることを意味します。
従来のように社長や経営層が意思決定を独断で行いません。
組織の変化に合せてメンバー全員で目的を進化させます。
目的というと未来予測して制御する印象がありますが、組織は機械ではなく自分自身のエネルギーに満ちた生き物です。未来のあるべき姿を予測して、それをコントロールするというよりは、まず組織がごく自然に向かうべき方向にただ耳を傾け、組織がそこにたどり着くように手助けすることがティール型組織の形です。
[予測→制御]ではなく[感受→応答]ということです。
これは、ソフトウェア開発の「アジャイル」の考え方として定着している考え方です。
[感受→応答]に集中すると、戦略や予算の考え方もあまり意味がなくなってきます。すると試行錯誤していた時間や会議の時間もなくなります。
この進化する目的の項は、理解が最も微妙で難しいと書かれています。ある意味挑戦的な部分で、実践が不可欠です。それには、実践するリーダーがこの根底にある新しい世界観(パラダイム)に納得し、内容をよく理解することが不可欠です。
ティール型組織を作るための条件
たった2つの必要条件
ティール組織へ移行するためには、どんな条件があるのでしょうか?リーダーシップの役割や取り組み方など疑問に対する説明があります。
- トップのリーダーシップ
- 組織のオーナーシップ
創業者やCEOは、ティール型の世界観をもつ必要があります。よく理解していなければティール型組織の実践はまったくうまくいきません。
組織のオーナーたちやその役員たちも同様に、ティール型の世界観をよく理解し受け入れなければなりません。それでなければ、すぐにトップダウン的な階層制御メカニズムに戻ってしまいます。
始める方法はいくつもある
組織全体ですぐに始めるのがよいのか、一部門からまず始めるのがよいのかなどいくつかアプローチが考えられます。本書では以下のようないくつかのヒントが紹介されています。
1つの部門において学習し、雰囲気作りをします。そして、この新しい手法を実験しテストしていきます。
そして一番エネルギッシュで、はじめたくてうずうずしているリーダーがいる部門への適用を考えます。
2つの組織を競わせます。既存の組織を変革するのではなく、既存組織のすぐ側に、別の小さな組織を設置し新旧ともに成長させます。
組織の全員に変革の始まりを知らせる公開イベントをアナウンスします。変革に熱心な応募者の組織に対し、ワークショップへの参加やテストを実施してもらい、実験ワークを並行させながら盛り上がりを徐々に一般化していきます。
全体組織で実践する特定のプラクティスを一度にアップデートします。例えば以下のとおりです。
- 全体性を導き出す「新しい会議方法」の提案
- 「助言プロセス」の組織全体への具体化
- 「予算編成プロセス」の新しい方式の採用
また、CEOには様々なことが求められます。
ひとつには、クライアントなど外に対する組織の顔であることです。
この役割は社内でも同じで、例えば新人オリエンテーションに参加し、組織の歴史や価値、目的を新入社員と共有するなどです。
もうひとつには、組織が望む方向に対してのセンサーの役割を果たすことです。誰もが先導者になるのがティール型ではありますが、CEOの向かう感覚能力は特に期待されます。
また、従来の経営手法が入り込んでしまわないように注意しながら、プラクティス実践のための場を提供することが重要です。
そして「自己管理」「全体性」「常に進化する目的」を実践するロールモデルになることこそ大切です。率先してマスク脱ぎ捨てる必要があります。
まとめ
今回の本の重要ポイントをマインドマップにまとめました。
こちらからPDFファイルがみられます。
目次
- 今日の組織はどこかが壊れている
- 新しいものの意味を理解するために,ある物語から始めましょう
- ブレークスルー1――セルフマネジメント
- ブレークスルー2――「全体性」を取り戻すための闘い
- ブレークスルー3――常に進化する目的
- ティール組織を作るための条件
- 「CEO」の役割
【内容情報】
あなたの会社は何色ですか? いまはティール(青緑色)が進化型!
「あなたの会社は何色ですか?」
本書では会社の発展段階を「色」で示します。
・強いボスからトップダウン→レッド(衝動型)です。
・官僚社会でまるで教会みたい→アンバー(順応型)です。
・あたかも機械の歯車の1つの扱い→オレンジ(達成型)です。
・アットホームで平等→グリーン(多元型)です。多くの会社はグリーン型になっているのではないでしょうか。
でも、その先にティール【青緑】組織があります。
今、既存の企業組織はさまざまな限界を迎えています。
もっと生き生きと働きたくありませんか? もっと人生の目的を実現したくないですか?
新しい働き方の理想形を筆者フレデリック・ラルーは示します。
世界から注目されている「ティール組織」で働き方改革をしましょう!【著者情報】
[イラスト解説]ティール組織―新しい働き方のスタイル 内容紹介より
フレデリック・ラルー
私は、何年にもわたり、マッキンゼーというコンサルティング会社で働いていました。
それから、「ティール組織」やそれに関するプロジェクトに取り組み始めるまでは、
私自身がコーチやファシリテーターとして実践していました。
ところが今、私はそれと比べるとシンプルな生活を送っています。
旅行することもなく、私の妻と2人の子どもたちと多くの時間を過ごしています。
長期的なプランも立てなくなりました。
私の頭を駆け巡る多くのプロジェクトの中で、どれが最も意味があり、やるべきかを感じようとしています(考えてみると、進化する目的に聞き耳を立てる組織とかわりありません)。
とはいっても、私はいろいろ手を付けてしまい、多くのプロジェクトを引き受けてしまっては、自然を楽しみ、
良い本を読む時間がなくなり、イライラしてしまいます。
しかしそうしたときでももちろん、私は自然の中の、樹の静かな存在の下で、腰を下ろします。
そうして私は、探検したい興味深い多くのプロジェクトについて、想いを廻らせずにはいられなくなるのです。
エティエンヌ・アペール
私は、15年間、経営コンサルタント、マネージャー、
オレンジ色の企業でのマネージャーのまとめ役として働いていたのですが、
それを、前世の出来事のように時々感じます。
2010年から私は、自分にあった大切な仕事に専念するようになり、落書きのようなスケッチ、絵、イラストを描くようになりました。
私は、いくつかのグラフィックノベルを出版しています。
その中には、仕事と仕事場を話題にしたものもあります。
組織が変革する旅路を、視覚的に伝えやすくするための絵を描いています。
組織を明るく、創造的に、インスパイアするように仕向けようとする人たちを私は助けて、彼らのパースペクティブを示すよい方法を見つけることができました。
私は、そのことを幸せに感じています。